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2016-10-31

「マネーワールド資本主義の未来」世界の成長は続くのか

NHKで3回に渡って放送された「シリーズマネーワールド資本主義の未来」を見た。

とても興味深い内容だったので、放送の内容をまとめてみようと思う。

今回は第1集 世界の成長は続くのか

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お金をめぐって世界に異変

経済はこのまま成長し続けるのか?限界が来てしまったのか?

資本主義発祥の地、イギリス。

240年前アダム・スミス(1723-1790)の理論が世界を成長へと駆り立てました。

アダム・スミスは「国富論」(1776)で、人類が欲望のまま活動すれば「見えざる手」が社会を繁栄に導くとしました。

スミスの予言通り、240年に渡って続いてきた経済成長。

ところが出発点の国であるイギリスが現在大変な事態に陥っている。

仕事も家もないヤングホームレス

イギリスでは仕事も家もないヤングホームレス(16~25歳)が8万人を突破。

資本主義の視点でみると、ヤングホームレスの増加は大問題と言われている。

ヤングホームレスは若い労働力が就職できない状態に陥っているということ。

すなわち経済成長の出発点が崩壊し始めていることを意味している。

高等教育や特別な資格も就職につながらず、事態を悪化させている。

 

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イギリスの幅広い分野で成長が低迷している。

今年のEU離脱決定の背景には、こうした経済停滞の背景があったとされている。

 

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(参考;World Development Indicators-Google Public Date Explorer)

 

「これは単なる不況というわけではなく資本主義の根幹に関わる異変ではないか」と専門家が懸念を抱くのは、問題がイギリスだけに留まらなかったためである。

2008年のリーマンショックの停滞から抜け出せなくなった国がたくさん出てきました。

世界が初めて直面する経済危機

ローレンス・サマーズ教授(元米財務官、現ハーバード大学教授)によると、これまでは不況に陥っても、経済政策や景気のサイクルで好景気を取り戻し全体として徐々に成長に向かっていましたが、今回はまるで成長の波が見えない壁にぶつかったかのように一向に上向こうとしないとしています。

更に賃金の悪化や物価の低迷など、成長に必要なエンジンが次々に止まっていくという深刻な事態が発生。

 

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サマーズ教授はこれまでの不況とは違い「長期停滞」という現象だとしています。

金融危機や不況は感染症のようなもので、治療をすれば治る。

しかし「長期停滞」は慢性的な病気で、どんどん社会を衰弱させていきます。

その結果投資がなくなっていき、それが若者の失業とスキルの喪失につながるという負の連鎖につながっている

「長期停滞」が過去の恐慌や低迷と異なるのが、これまでの経済政策が思うような成果を見せていないこと。

 

リーマンショックの後、世界各国の財務大臣と共に景気対策を主導したマービン・キング氏(元イングランド銀行総裁)によると、8年前世界の首脳たちは今のような危機を誰も予想していなかったとしています。

再び成長を取り戻せると考えていました。

解決の切り札として取り組んだのが「低金利政策」

停滞した経済を活性化させるため中央銀行が金利を一斉に引き下げました。

金利が低ければお金を借りやすくなり、貯金しても利息が付かないのでよりお金を使うようになります。

多くのお金を流通させ、経済の活性化を促すという計画でした。

ところが極限まで金利を下げても成長が上向かない。

 

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資本主義のこれまでの常識が通用しないという事態が起きている。

キング氏は資本主義が安定した世界を保つという物語は誤りだったとし、我々は恐ろしく不透明で何が起きるかわからない世界に生きていると話しています。

各国の問題点

アメリカ

先進国の中ではまともなように感じる経済成長率で、世界で一番豊かな国とされているが、格差が深刻で平均的な労働者は全然豊かになっていない

ドイツ

日本と似ていて人口成長が落ちてきており、労働力が減ってきて成長率を補うことが難しい。

マクロ的な政府の対策でミクロの人々の問題までコントロールできるのか?

経済が冷え込んでいるときに政府ができること。

①財政政策【公共事業・減税】

②金融政策【低金利など】

マイナス金利までいってもお金を使おうとしない、大企業も内部留保を貯めて賃金を上げようとしないというのは、どこかで将来的な不安があってのこと。

その不安を払拭できないことにはいくら金利を下げても景気は回復しないのでは?

成長しなくてもよい?

リーマンショック以降は経済成長しなくてもよいという声が増えている。

しかし経済成長がゼロの世界とは、次へ次へとつなぐ意識が薄れ発明も生まれない世界になってしまう。

成長は限界にきているのか?

地理的限界

人類の繁栄の歴史の研究をしてきたティム・ジャクソン教授(サリー大学教授)によると、成長の限界について、資本主義の原動力が止まってしまったことが原因だと言っています。

それは「フロンティアの消失」です。

資本主義が経済規模をどんどん拡大させ、今は満杯の状態になっている。

限られた箱の中のアリの巣のような状態。

先進国は今まで安い労働力や資源を求めて植民地を開拓し、20世紀に入ると新興国へ投資も始める。

まるでアリが巣を広げるように、より外へより外へと広げていく。

遠くに成長の源泉を求めて自国の成長につなげていった先進国も、爆発的な成長も限界が見え始める。

 

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ジャクソン教授によると、人類の欲望は地理的限界を棚上げし無限に成長できると思い込ませていたと言います。

しかし先進国の経済は目に見える形で減速し、この方法ではもう成長できないことがわかったとしています。

金融空間

地理的なフロンティアが限界に達する中、人類が新たに見出したのが「金融空間」でした。

 

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実体経済ではなく、国境を越えた為替取引で利益を上げる、マネーがマネーを生む錬金術に新たな成長を求めました。

90年代以降、株や債券などの金融資産が急速に拡大しました。

2007年、金融資産は実体経済の3.5倍の206兆ドルに達する。

 

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しかしリーマンショックの後、その成長も頭打ちになります。

 

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多くの経済学者が、これ以上経済フロンティアは残されていないと主張するようになりました。

大企業の不正に見る異変

ヨーロッパ最高の知性と呼ばれるフランスの経済学者ジャック・アタリ氏によると、経済における不正や腐敗、犯罪のまん延などが大きな問題となっており、民主主義や公益を守ることを資本主義が見失うと、破滅の始まりだと言っています。

信頼と実績を積み重ねてきた大企業に、かつてでは考えられないような不正が発見されています。

 

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なぜ大企業の不正が成長の限界を示しているのか?

それは成長が減速している企業で利益を上げるには不正に手を染めるしかないからです。

資本主義そのものが変質している

ロバート・ライシュ教授(元米労働長官、現カリフォルニア大学教授)によると、「スーパー資本主義」ともいうべき異質なものが生まれようとしていると言っています。

より早く、より効率良く、より手頃なものを過剰なまでに追及するシステムに変貌しているのです。

私たち人間は、どれほど社会的良心がある人でさえできるかぎり得をしたいと望む。

そして企業はあらゆる手を使って競争に生き残ろうとします。

行き過ぎた資本主義は弱肉強食のジャングルのような世界を作り上げている

成長のカギは残されている

技術革新イノベーション

世界は革新的なイノベーションでまだ成長できるとも言われており、その中で注目を集めているのが「AI(人工知能)」です。

今、AI(人工知能)が金融の世界を大きく変えようとしています。

AI(人工知能)を使った投資ファンドの会社ロテラ社のロバート社長によると、そのうちAIが進化し1か月先のマーケットの動きまで予測して売買できるようになると言っています。

マクロ経済学の世界的権威のロバート・ゴードン教授(ノースウェスタン大学教授)によると、人類の新たな英知を生み出す新たなイノベーションこそが停滞を打ち破るカギだとしています。

多くの分野でイノベーションが育っている。

3DプリンターやAI、ビッグデータそして自動運転。

生産性が上がり成長は加速するでしょうと話しています。

シェアリングエコノミー

これまでモノを生産し、モノの消費や所有を促すことで成長を維持してきた資本主義。

 

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その構図を根底から覆し、モノを作らず空間やサービスを共有することで利益を生む、全く新たな経済を生み出そうというもの。

 

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Uber(ウーバー)

シェアリングエコノミーを掲げるベンチャー企業が急成長し莫大な利益を上げている。

筆頭に立つのが新型配車サービスUber(ウーバー)。

創業わずか7年で企業価値は7兆円を突破。

 

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Airbnb(エアビーアンドビー)

旅行者と自宅の空き部屋を貸したい人をネットで結ぶ民泊の最大手がAirbnb(エアビーアンドビー)。

近隣のホテルより2-3割安い値段で部屋を提供し、節約志向の高い旅行者の心を捉えている。

創業わずか8年で、時価総額3兆円を超えています。

利用者は今年1億人を超えるとみられています。

 

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Airbnbの創業者の一人ジョー・ゲビアさんは、シェアリングエコノミーがこれからの経済を牽引していくと強調しています。

臨時収入を得たい人、家に誰か訪問して欲しいという現代の高齢者にもマッチしていると言い、20世紀型の古い経済からより多くの市民が経済の主体となって利益を得ていくという新たな資本主義に移行していくと言っています。

創造的破壊

経済学者シュンペーターが唱えたのは、新たな企業が旧来の企業を駆逐する「創造的破壊」です。

経済が停滞した世界に全く新たな手法のイノベーションが登場する。

便利で新しく、より安価なものなどに人気が集まり古いモノは淘汰されていきます。

しかしすぐに真似する企業が次々と現れ、また全体の利益を上げられなくなるが、成長のためには無限の破壊が避けられないと言います。

この「創造的破壊」は昔からたくさん繰り返されてきたが、昔と今の大きな違いは、短期間で変化が起きてることだという。

日本は成長できるのか?

日本は生産年齢人口1人あたりの実質GDP成長率でみると、決して低いわけではない。

生産年齢人口は減少を始めているが、一人当たりは頑張って働いているという結果が出ている。

 

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70年代の高度成長のような大きな成長にはならないとは思うが、日本は成長できるのでは?との意見でした。

私もこの意見に賛成で、創造的破壊は凄いスピードで起こり一部の人は貧しくなるとは思いますが、AI(人工知能)などのイノベーションで成長できるのではと期待しています。

シェアリングエコノミーは、日本では保守的な国柄からそこまで受け入れられないような気もしています。(あくまで個人的な感想です。)

資本主義は今までも変わってきていて、いろんな形で軌道修正がされてきた。

ルールを変えていくことによって、基本は資本主義・市場経済で動かしていきながら、問題を克服していく知恵や広い意味での制度設計の見直しの余地がまだあるのでは?とのことでした。

まとめ

成長への挑戦

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ーNHK「シリーズ マネー・ワールド資本主義の未来 第1集 世界の成長は続くのか」(2016年10月16日放送)より文字起こし及び意訳・一部抜粋




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